「それに、私のこと無視したし……」
お陰で、初めてのメイクの思い出は最悪だ。
「だから朝陽に、責められたくないっ」
フイッと顔を逸らせば、なんだかとても空しくなった。
本当は、こんなことが言いたかったんじゃないのに。
本当はもっと、朝陽に言いたいことがあるのに。
「俺が手を繋いで……って、まさか……ああ」
けれど何を急に納得したのか、朝陽は不意に、小さく相槌を打った。
「それって、ちょっと前の話だよな」
「……そうだよ」
「あれは、今回のグループワークのテーマについて話してたからだよ」
「それ、全然答えになってないよ……」
自分が理不尽なことを言っているともわかっている。
私が朝陽に責められる理由もないなら、私にも朝陽を責める権利なんてない。
「だから……。今回のグループワークのテーマ、最初にアレにしようって言い出したのは、あの子なんだ」
「え……」
「あの子の弟が、菜乃花と同じADHDで……。それで、今回のグループワークを通してひとりでも多くの人に、発達障害というものを知ってほしいって……」
思いもよらない言葉に、ゆっくりと顔を上げた。
そうすれば柔らかに微笑む朝陽と目が合って、胸がギュウっと締め付けられる。