「──菜乃花はアンタのこと、神様みたいに思ってるぞ」


陸斗くんの声だ。

突然のことに足を止めた朝陽は静かに振り向くと、再び陸斗くんへと目を向ける。

真っ直ぐに顔を上げたまま、ほんの少しの間を開けた朝陽が穏やかに笑った。


「──菜乃花のためなら、神様にだってなってやる」


その声は、頑なな私の意地を、いとも簡単に砕き割った。


「俺の幸せは、いつだって菜乃花の隣にある。俺はずっと、菜乃花の望むすべてを叶える神様になりたいと思ってた」

「あさ、ひ……っ」


今日何度目かもわからない、涙の雫が頬を伝って零れ落ちる。

それだけを言った朝陽は再び前を向くと、私の手を引き歩き出した。


「……バカじゃねぇの」


ぽつりと零された言葉と笑顔が、私たちに届くことはない。

永遠にも長く感じた道のりの先には、大好きな彼の温もりが待っていた。