「……あと、ついでだから、これだけは言っておく」

「え……?」

「アイツと同じだ。俺も、アンタの犠牲になろうなんて、一度だって思ったことはなかった。ただ、俺が菜乃花のそばにいたいからいたいって伝えただけだ。……つまり俺は、アンタのことを──」

「──菜乃花?」


その時、穏やかな声が私を呼んだ。

弾かれたように振り向くと、朝陽が驚いたような表情で私を見ていた。


「あさ、ひ……」


朝陽だ。朝陽が今、目の前にいる。

つい先程も姿を見たばかりだというのに、胸の奥が締め付けられて、酷く苦しい。


「菜乃花、なんで……」


困惑に濡れた声をぽつりと零した朝陽は不意に、私の隣に立つ陸斗くんへと目を向けた。

陸斗くんを見る朝陽の目は、あからさまな怒りに濡れていて、心臓が大袈裟に飛び跳ねる。