「今の俺が彼女のためにできることは、今、この場でこうしてみなさんに希望を渡すことだけです……っ」


そう言うと、ステージの真ん中で睫毛を伏せた朝陽を前に、私は今度こそ溢れる涙を止められなかった。

朝陽は、一つだけ、間違えている。

今、朝陽は私のそばにいてくれたことを、それしかできなかったのだと言ったけど……。

『俺はいつも、菜乃花の味方だから』

そう言ってくれた彼がいたから、私は今、私でいられる。

朝陽がそばにいてくれたから、私は今日まで何度くじけても、前を向いて歩きだせたのだ。


「自分以外の誰かに認めてもらうだけで世界が変わる。それはきっと、世の中の誰にでも共通して言えることだと、僕は信じています」


その言葉を合図に、再び真っ直ぐに前を向いた朝陽は一度だけ静かに頭を下げた。

同時に、講堂内が静寂に覆われる。

朝陽の勝手な行動に、誰もが驚き、このあとの対応に迷っているようだった。


「い、以上、第六班でした……!」


けれど、進行役の先生がその言葉を口にした瞬間、会場にいる数名の人たちが立ち上がり、大きな拍手を鳴らし始めた。