「ずっとそばにいた俺でもそうなのに、"彼らに理解を示し、寄り添うことが大事"だなんて、軽々しく口にはできない。だって、俺がいくら寄り添ったところで、彼女の背負う苦しみも傷も、何ひとつ、本当の意味で理解することなんてできなかったから……」


──『アンタって、アイツのことを神様みたいに言うよな』

ふと、以前に陸斗くんから言われた言葉が脳裏を過ぎった。

彼の言葉の通り、私は朝陽のことを心のどこかで神様──手の届かない、完璧な人だと思い込んでいた。


「俺は、彼女の救いにはなれなかった……」


短く息を吐いた朝陽を前に、誰もが声を殺して息を呑んだ。

……ああ。私はこれまで一体、彼の何を見てきたのだろう。

産まれたときからずっと、そばにいたのに。

朝陽が私のことをこんなふうに想い、悩み、葛藤していたことにも気付けなかった。

彼は誰よりも私を理解してくれているのだと思い込んでいて……彼の抱える苦しみを、見落としていた。



「だから、今日のこのプレゼンテーションは、僕からの願いです」



再び真っ直ぐに前を向いた朝陽は、講堂内に凛とした声を響かせる。