「もちろん途中で、心が折れてしまって諦めることもある。だけど、それは誰にでも言えるような、普通のことで……当たり前のことだとも、僕は思います。それなのに彼女は、何かを諦めるたびに自分のことを責めて、"仕方がない"と言いながら、いつも泣きそうな顔で、笑ってた」


──仕方がない。それは私の、口癖だ。

できなくても仕方がない。やってダメなら仕方がない。

何かにつけて、その言葉を口にしていたと今更気付く。


「僕は……俺はいつも、そんな彼女のそばで、"きみは、きみらしくあればいい"と伝えるのが精一杯だった」


『菜乃花は、菜乃花らしくやればいい』

それはもう何度貰ったかもわからない、朝陽の言葉。


「でも、本当に、それだけだった。俺が彼女にできたことは、彼女のそばで、彼女をただひたすら肯定することだけで……それ以外には何も、できなかったんです」


そこまで言うと朝陽は声を詰まらせ、自分の唇を噛み締める。