「そして、みなさんの話を聞くうちに、どれだけ僕たちが浅はかであったか思い知ったのです」


静まり返った会場内には、朝陽の透明な声だけが響いている。


「僕たちが考える以上に、みなさんが生きる世界は息苦しくて……不平等でした」


──それは私が、生きている世界のことだ。

抱える問題を理解してもらえずに責められ、蔑まれ、縛り付けられる世界のこと。


「同じ診断名がついたとしても、個人や環境によって現れる症状も違います。得意なことや不得意なことも、ひとり一人、違うんです」


私と同じ病名がついている人でも、忘れ物を全くしない人もいる。

それとは別に部屋の片付けが全くできなかったり、授業中ひたすら身体を揺らしてしまったり……更には聴覚過敏といって、音にとても過敏になってしまう人たちもいるのだ。

そのほかにも、成績が飛びぬけて優秀な人までいるらしい。

だからこそ診断が難しく、デリケートな問題なのだと以前、療育の先生は言っていた。


「だからこそ、僕たちは──」


と、そこまで言った朝陽は不意に、手元の原稿へと落としていた視線を上げた。