だって、朝陽は。
朝陽は私が、これまで幾度となく傷付いてきたところも見てきたはずだ。
だからこそ、軽々しくこのことを大勢の人の前で触れ廻ってほしくないと思っていることも──誰よりも一番わかってくれていたはずなのに、こんなの酷い、許せない。
「……まず、はじめに、これだけは言わせてください。僕たちは今回、このテーマを決して軽い気持ちで選択したわけではありません」
「……っ」
心のうちを見透かされたような言葉に、思わずドアノブを持つ手が止まった。
「覚悟を持って、誠実に向き合おうとチームのメンバーたちと最初に話し合いました。だからこそ、より深く、みなさんの想いを知るために、いくつかの病院や施設も訪問させていただいた上で、取材協力もしていただきました」
力強い声が、講堂内に響き渡る。
今回のグループワークに、朝陽は最初から真摯に向き合い、取り組んでいた。
真面目で聡明な朝陽のことだから、グループリーダーに指名されたとしても、なんの違和感も覚えなかった。
だけど……もしかしたら朝陽は自ら、リーダーを買って出たのかもしれない、なんて、今の言葉を聞いて思った。
一点の曇りもない声が一瞬で会場にいる全員を黙らせて、私も外へ出ようとしていた足の踵を、返さずにはいられなかった。