「もしかして月嶋さんも、特進科のプレゼンテーション見に行くの?」
「あ……は、はい。実は特進科に幼馴染──いえ、友達がいて、それで……」
慌てて言葉を濁すと何故か、上田先生が「ああ」と納得したように息を吐いた。
「なるほど。それでかな? 今回、一組、テーマが月嶋さんの──」
「あっ、上田先生! ここにいらしたんですか! そろそろ御来賓のみなさんがいらっしゃいますよ!」
けれど、何かを言いかけた上田先生の言葉を、低く透る声が遮った。
上田先生と同時に声のした方へと目をやれば、廊下の先に頭と眼鏡を光らせた教頭先生が立っている。
「御来賓のみなさんのお迎え、お願いしてあったでしょう。よろしくお願いしますね!」
続けて放たれた声に、上田先生はあからさまに焦った様子で自身の腕時計を確認した。
「わ、もうそんな時間? ごめんね、月嶋さん。私ちょっと、来賓の方を案内する仕事を任されてて……」
「あ……はい。私は大丈夫なので、行ってください」
「ありがとう。それじゃあ、あとでね」
言いながら、花が開くように笑った上田先生は、軽やかな足音を響かせその場をあとにした。