「よし……っ」
今日も遠くで、野球部の掛け声が聞こえる。
私は手元の荷物を乱雑に鞄の中へと押し込むと、リュージくんと約束した講堂へと向かった。
大量にあるメモの通りなら、プレゼンテーションが始まるのは十四時だ。
そろそろ準備も終わって、観覧の生徒や先生たちが集まって来る頃だろう。
講堂へと向かう途中、長い廊下の片隅で足を止めた私は、ふと第三音楽室のある方へと目を向けた。
まさか……今日も陸斗くんはあの場所で、私を待っているのだろうか。
多分陸斗くんは本気で、自分が朝陽の代わりになろうと考えている。
今まで朝陽がそうしてくれていたように……私のそばで、私を支えようとしてくれているんだ。
『俺は本気だ』
その言葉の通り、陸斗くんは何度でも私に同じ言葉をぶつけ続けた。
お陰で彼から貰った言葉のほとんどは、しっかりと脳裏に焼き付いている。
毎朝、下駄箱で私を待つ陸斗くんは、一体何時からあそこにいるのか……。
教室でも授業中、何かあると決まって彼は私をフォローしてくれた。