つまり、陸斗くんは私を特別扱いしているということ。

──本当に、陸斗くんは私を特別に思ってくれているのかな?

だとしたら、その"特別"に繋がる理由はなんだろう。

やっぱり、お兄さんと私を重ねて見ているから?

黙っていても女の子たちから注目されるような彼が……どうして私を、特別扱いしてくれるの?


「……あの、陸斗くん」


ほんの少し前を歩く彼の背中に声をかけると、綺麗なブラウンの瞳が私を静かに振り返った。


「なに」


ぶっきらぼうな返事に心臓がドクリと高鳴ってしまうのは──以前、日比野さんに言われた言葉が、私の心をかき乱しているからだ。

『あれは絶対、月嶋さんのこと好きだよね』


「菜乃花?」

「っ、わぁ!! なんでもない!! ウソウソ、それはないっ!!」

「……はぁ?」


突然声を張り上げた私を前に、陸斗くんが訝しげに眉根を寄せた。

再び目と目が合えば身体中の血液が沸騰したように熱くなり、顔まで赤く染まっていくのがわかる。

だけど、陸斗くんが私のことを好きなんて。

そんなバカなことが、あるはずもない。