「でも、それが間違ってた。だって、なのちゃんは朝陽に幸せにしてもらいたいなんて、これっぽっちも望んでなかっただろ? 逆に、朝陽が幸せになる方法をいつも考えて悩んでた。それなのに、俺は……本当に、馬鹿だよな」

「……っ」


今度こそ、喉の奥が締め付けられたように痛んで、唇が震えた。

涙が瞼の縁に滲んで、瞬きをするだけで零れそうだ。

リュージくんは、いつも私と朝陽を見ていてくれた。

だけど、ただ、見ていたわけじゃない。

ただ、そばにいてくれたわけじゃない。

リュージくんは私達のすぐそばで、誰よりも私達に理解を示し、支えてくれていたのだ。

俯きそうになるときも、いつも私達を笑顔にして励ましてくれた。

私にとっても朝陽にとっても、リュージくんの存在は、何よりの救いだった。


「リュージくん、私……っ」

「ねぇ、なのちゃん、笑ってよ」

「え……」

「俺、なのちゃんの笑顔が好きなんだ。なのちゃんが笑えるなら、どこだっていい。たとえそれが、朝陽の隣じゃなくても──俺は、なのちゃんが笑顔になれるなら、どこでもいい」


その言葉を合図に、涙の雫が、とうとう頬を伝って零れ落ちた。

優しすぎる彼の言葉は、私には勿体無い。