「ふぅ……」
私は小さく深呼吸をすると、先生のあとを追うように踵を返した。
図書室も音楽室と同じように静かだけれど、やっぱり少し、落ち着かない。
そんなことを思った私は図書室の扉に手を掛けて、そっと開こうとしたのだけれど──。
「あ……」
タイミングよく、目の前の扉が開く。顔を出したのは、リュージくんだった。
「なの、ちゃん……?」
思わずお互い目を丸くして固まって、数秒見つめ合う。
けれど慌てて我に返った私は、そのまま何もなかった顔で、彼の横を通り過ぎようと足を一歩、前に出した。
「なのちゃん、待って……!」
……捕まった。
一瞬、そんなことを思った自分を嫌悪する。
振り向くと今にも泣きだしそうな顔で笑うリュージくんがいて、胸の真ん中がズキリと軋んだ。
リュージくんとは昨日の朝、話をしてから顔を合わせていない。
あのあと、彼から特に何か連絡が来ることもなかったから、なんとなく今会ってしまうのは気まずかった。