「とろとろしてんなよ」
無造作に掴まれた手。私は履き途中だった上履きに慌てて踵をねじ込むと、促されるまま足を前へと踏み出した。
……何。どうなってるの?
頭の中ではグルグルと疑問ばかりが駆け巡る。
そのまま私の手を引いて、ズンズンと歩き出した陸斗くんの背中を、私はただただ必死に追いかけた。
「り、陸斗くん、あの……っ」
しばらく歩いて、ようやく吐き出した声には、困惑が滲んでいた。
一瞬、チラリと視線だけで振り返った陸斗くんは私に返事をしてくれることなく、すぐに前を向いてしまう。
本当に、何が起きてるんだろう?
学校に着いたら何故か下駄箱に陸斗くんがいて、私を見るなり『遅い』と言った。
そして今は、彼と手を繋ぎながら教室に向かって歩いている。
私達を見る周りの視線も痛いし、歩調を合わせてくれるつもりのないらしい彼に、私は着いていくのが精一杯だった。