「……俺に、しろよ」
「りくと、くん……?」
「俺は絶対に、菜乃花を一人にしない。俺がアイツの代わりに、そばにいるから……っ。だからもう、一人で泣くな……。お願いだから、もう泣くな……」
そっと身体を離して、私を真っ直ぐに見る彼の目にも、涙が薄く滲んでいた。
「これからは、俺が菜乃花のそばにいる。だから、もうこれ以上……自分を追い詰めるのはやめてくれ」
まるで懇願するように紡がれた言葉に、私の目からは音もなく涙の雫が零れ落ちた。
茜色に染まった世界はいつも幻想的で、穏やかだ。
その世界で、たった二人。
息を殺した私達は互いの鼓動だけを感じていた。
「……酷い顔だな」
陸斗くんが泣きそうな顔で小さく笑う。
静かに揺れるアイボリーのカーテンが、波のようにゆらゆらと揺れている。
再び私の身体を抱き寄せた彼の腕は逞しく、何よりとても温かかった。