「あ、朝陽……っ」
もう、ここにいない人の名前をただ、叫び続けた。
それしか今の私にできることはなくて、それだけが今の私の精一杯だったのだ。
「あ、あさ……ひっ」
──好き。
ほんとは朝陽に、この気持ちを伝えたい。
だけど伝えたいのに……伝えられない。
そばにいたい。そばにいてほしいって、ただ、それだけだった。
たとえ隣に並べなくても、そばにいられるだけで十分だった。
「なんでだよ……」
「……っ」
「アンタも兄貴も……なんでそんなに、不器用なんだよ……っ!」
「──!?」
けれど、涙で濡れた顔を上げた先。
苦しそうに吐き出された言葉と同時に突然、陸斗くんに抱き締められた。
「り、陸斗く」
「もう、やめろよ……」
「……え?」
「そんなに苦しいなら、捨てちまえ。このままじゃ、菜乃花まで壊れそうで、見てられねぇよ」
耳元で紡がれた言葉は小さく震えていて、私を抱き締める腕も力強いのにどこか頼りなさげに震えていた。