「あの、すみません! 2―Aの教室って、この方向で合ってますか……?」
「ああ、うん。2―Aなら、その階段を上がって右に曲がったら、すぐの教室だよ」
「ありがとうございます……!」
途中、擦れ違った生徒に確認をして、私は小走りで階段へと向かった。
──もうすぐ、朝陽に会える。
弾む心はいつの間にか、一週間前……朝陽に突きつけられた言葉を頭の中から掻き消した。
バカな私。そう思っても、どうしても足を止めることはできない。
たった今教えてもらった階段の前までくると、一度だけ小さく息を吐き出した。
顔を上げ、途方もなく長く感じる階段を一歩一歩上がっていく。
「──っ!」
けれど、その途中、私はそれまで急いでいた足を止めた。
──朝陽だ。
ふわりと、風に揺れる黒髪。陶器のようにシミ一つない綺麗な肌。
美術品のように整った顔立ちと……ビー玉みたいな、ブラウンの瞳。
見上げた先には、私がこの世界に生まれてからずっと、想い続けている彼がいた。