「ほんと朝陽は、なのちゃんのことになると心が狭いよな」


気が付けば海の上に浮かんでいた太陽が、オレンジ色の光を帯びて、水平線の向こうに姿を消そうとしていた。

今日も私の、何気ない一日が終わろうとしている。

何気ない、とても平凡で、ごく当たり前の一日。

何か特別なことがあったわけではない。

いつもより大きな発見があったわけでもない。

けれど、その一日が私にとってはキラキラと輝いていて……時々、目を逸らしたくなるほどに、苦しかった。


「なんとでも言え。だけど、菜乃花に触るな」


温かい手が再び私の手を優しく掴む。

今日も大好きな朝陽が、隣にいてくれること。

当たり前に彼が隣で笑っていてくれることが、このときの私には何よりの幸せで……何よりの、不安だった。