「兄貴は間違えたけど、でも……。もしも、もう少し早くアンタと出逢えてたら、兄貴のこと、俺達家族で救えたんじゃないか、なんて。そんな、バカなことまで考えた」
「え……」
「アンタが教えてくれたんだ。人は自分を認めてくれる誰かがそばにいるだけで、何度でも顔を上げて歩いていけるんだって──」
言葉と同時に、陸斗くんの真っ直ぐな目が、私を射抜いた。
「まぁ、最初はアンタの幼馴染と兄貴が似てるって、思ってたんだけどな」
「朝陽と……?」
「ああ。でも、違った。アンタだったんだ。必死に平気なフリをして、強がって。少しも傷付いていない顔をしながら、本当はいつも一人で戦ってた」
「そんな、私は……」
「直向きな姿を見ているうちに、俺は、いつの間にかアンタから目が離せなくなってた。いつからか、アンタのことをもっと知りたいと思うようになってた」
繋がった指先から熱が伝わって、胸の鼓動ばかりが速くなる。
「本当に……もう少し早く出逢えてたら、色んなことが変わってたんじゃないか、なんてことまで思ってる。アンタの中にいる、"もう一人の神様"より早く、俺達が出会えていたら──」
「……っ!?」
と、陸斗くんがそこまで言いかけたとき、私達の背後で勢い良く扉の開く音がした。
同時に強く風が吹き、私達を覆い隠していたアイボリーのカーテンが大きく揺れる。