「神様とか、意味分かんないんだけど」

「神様は、神様だよ。神様な陸斗くんが普通じゃなかったら、神様自体も普通じゃないってことになるよ?」

「……いや、余計に意味がわかんないし。アンタって、バカだよな。ほんと、大袈裟にも程があるっつーか……」


とうとう息を吐いた陸斗くんは、呆れたように小さく笑った。

つられて笑うと、夏風が頬を撫でる。

同時に右手に触れたのは、陸斗くんの温かい手だ。


「……陸斗くん?」


見上げれば綺麗なブラウンの瞳と目が合った。

胸の鼓動が早鐘を打つように高鳴りだして、息をするのも苦しくなる。


「俺なんかが神様になれるなら、俺以外の誰でも神様になれるだろ」


世の中には普通の人なんていない。

誰だって、何かが欠けてる。

ただ、その欠けてる場所が違うだけ。

完璧な人なんて、どこにも存在しないのだから……。