「うん。でも、帰っても別にやることないし。第三棟の資料室に運ぶんでしょう? それなら私でも手伝えるから」
言いながら、私はリュージくんの手から画材の入ったケースを取った。
最初こそ遠慮していたリュージくんだけれど、譲らない私に負けて、結局二人で資料室に向かうことになった。
……第三棟の資料室は、第三音楽室の隣にある部屋だ。
最近まで本当に資料室として使われていたらしいけど、今ではほとんど、物置部屋のようになっている。
「その横断幕って、どんなことに使う予定だったの?」
長い廊下を歩きながら尋ねると、リュージくんが「ああ」と小さく声を零した。
「実は、俺達のグループがやる課題が、企業宣伝効果の検証なんだけど……。この横断幕は、その一例として出す資料なんだ。まぁ、これは失敗したやつだけど」
「そうなんだ……」
企業宣伝効果の検証……。
やっぱり、特進科は私の想像ではとても追いつかないことをやっている。
リュージくんも昔から成績優秀だったし、朝陽同様、今でもそれは変わらないのだろう。