「なのちゃんが一人で帰っていくのが見えたから、急いで追い掛けてきた」
よく見ると、リュージくんの手には旗だけではなく、画材が入ったケースも握られている。
多分、どこかに向かう途中で私を見つけて、追いかけてきてくれたのだ。
「それ……」
「ああ、これ? これは、今度のグループワークのプレゼンのときに使う予定の横断幕なんだ。でも、これは失敗しちゃってさぁ。担任に相談したら、とりあえず第三棟の資料室に持って行けって言われて……今、行こうとしてたところなんだけど」
……グループワーク。特進科の特別授業だ。
朝陽はそのせいで忙しくて、その授業が終わるまで、帰りは私と一緒に帰れないと言っていた。
それなのに昨日は、女の子と一緒に歩いていて……。
二人で仲良く手を繋いで、学校を出ていくところまで見てしまった。
「なのちゃん?」
「……リュージくん、それ、ひとつ持つよ」
「え? でも、なのちゃん今から帰るところだったんだろ?」
思い出したらズキズキと胸が痛む。