『あれは絶対、月嶋さんのこと好きだよね』
たった今、日比野さんに言われたばかりの言葉が過って、思わず頬が赤く染まった。
だけど彼の目は真っ直ぐに、グラウンドへと向けられていてこちらを向く気配はない。
……絶対、日比野さんの勘違いだよ。
そのまま授業が始まって、彼と話しをすることはなかった。
『どんなに追い掛けても、届かないこともある』
今も耳に残る、陸斗くんの声。
私は席につき前を向くと、必死にその声を頭の中で掻き消した。
* * *
「なのちゃん!」
放課後、一人で昇降口に向かって歩いていると、聞き慣れた声が私を呼んだ。
弾かれたように振り向けば、何か大きな旗のようなものを抱えたリュージくんがいる。
「リュージくん、どうしたの?」
足元に落とした靴を再度下駄箱の中へと戻し、慌てて彼のもとに駆け寄った。
そうすればリュージくんは大きな旗を肩に担ぎ直して、向日葵のように明るく笑う。