「やっぱり〜。だって、なんだかんだカッコイイもんねー、山田。この間も、超カッコ良かったねーって、クラスのみんなで話してたよ」
「この間……?」
「うん。ほら、この間のプリント事件のとき。数学の先生に真っ向から噛み付いて……。山田ってクールで普段、何を考えてるのかよくわからないけど。あれは絶対、月嶋さんのこと好きだよねーって、クラスの女子みんなで話してたんだから」
思いもよらない言葉に口をポカンと開けてから、慌てて声を張り上げた。
「ち、違うよ! そんなことない! 陸斗くんが私のことを好きだとか、絶対絶対、ないから!」
「え〜」
「それに、私の好きな人は陸斗くんじゃなくて……。その、別の……特進科にいる、山田あ──」
──朝陽。と、私が言い掛けたところで、次の授業の始まりを告げるチャイムの音が辺り一帯に響き渡った。
「うわっ、急ごう! 次の授業、最悪なことに数学だし!」
「う、うん……っ!」
結局、肝心なことは言えないまま……日比野さんと私は、慌てて荷物を持ってトイレをあとにした。
私達と同様に、忙しなく廊下を走る生徒たち。
教室に入ると、隣の席にはいつも通り、陸斗くんが静かに座っていて……。



