* * *
「はぁー、疲れた」
授業が終わり、女子更衣室で着替えた私と日比野さんは、並んで教室へと向かった。
その途中、トイレに寄りたいと言い出した彼女に連れ添って、二人で鏡の前に立つ。
「あのさぁ、前から思ってたんだけど」
鞄の中から化粧ポーチを取り出して、顔にファンデーションを叩く彼女の横顔をジッと見つめた。
綺麗な顔。日比野さんはメイクなんてしなくても十分可愛いけど、メイクをするとより一層キラキラと輝いて見えるんだ。
「月嶋さんって、いつも、すっぴんだよね?」
「へ……え、あ、うん。メイクとか、よくわからないから……」
なんだか恥ずかしくなって、私は慌てて顔を隠すように俯いた。
今更だけど私って、綺麗な日比野さんと並ぶととても、不釣り合いだ。
メイクに興味がなかったわけではない。
なんとなく、自分には分不相応な気がして、今日まで一度も経験したことがなかった。