人は見かけによらない。というか、見た目だけでは人の内面までわからないんだ。

そんなの、私が一番よくわかっていたはずなのに。

……そういえば、陸斗くんもそうだった。

話す前は気難しくて、何を考えているのかわからない人だと思っていたけれど……。

少しずつ彼を知るうちに、彼の持つ優しさに気が付いて、何度も何度も励まされた。


「バレーボールって、結構楽しいよね。試合とか、なんだかんだ盛り上がるし」


ポーンと腕でボールを高く上げた日比野さんに、精一杯頷いた。

あの、プリント事件のあと──。私は偶然、朝陽が女の子と手を繋いで歩いている姿を見てしまった。

仕方がないことだと頭ではわかっていたのに、ショックで泣きだした私を、陸斗くんは何故か力強く、抱きしめた。

『……そんなに泣くくらいなら、やめちまえ』

今も耳に残る彼の言葉と、高鳴る鼓動。

陸斗くんはしばらく私を抱き締めたあと、何も言わずに唐突に立ち上がり、私の手からプリントを攫っていった。

あれ以来、陸斗くんとは一度も言葉を交していない。

放課後も……なんとなく気まずくて、第三音楽室には行けずにいた。