「あーさーひ、くんっ」
「ゲッ」
「っ!!」
けれど、不意打ちで背後から投げられた声に、私たちは結局、繋いでいた手を反射的に離してしまった。
弾かれたように振り向くと、予想通り、見知った顔が満面の笑みを浮かべて立っている。
隣の朝陽は忌々しそうに舌を打つと、ひとりお先に、前を向いた。
「リュージくん! いつからいたの!?」
「今だよ、今。っていうか、手、全然、繋いでてくれて構わないんだけど〜。ほら、俺、もう見慣れてるし? なっ、朝陽?」
「頼むからハゲてくれ……」
朝陽と同じ、特進科であることを示す色のネクタイをしたリュージくんが、朝陽の肩に腕を回してニヤニヤと笑った。
男の子らしい、熊みたいな身体つきをしたリュージくんは、朝陽ととても仲が良いのだ。
所謂、親友だと思うのだけれど、朝陽にそれを言うと必ず「違う」と不満気に突っぱねられる。