「う……っ、あ……」
涙が頬を伝って零れ落ち、冷たい床に小さなシミを作っていった。
こんな自分が、大嫌い。
嫉妬にまみれて、嫌なことばかり思ってしまう自分が大嫌いだ。
「……そんなに泣くくらいなら、やめちまえ」
「……え?」
「どうせ、どれだけ想っても意味ないんだろ? だったら自分から手放せばいい。さっさと手放して、解放されて楽になればいい」
──陸斗くん?
と、聞き返そうとしたところで突然、身体を強く引き寄せられた。
温かい腕の中で顔を上げると綺麗なブラウンの瞳と目が合って、心臓が再び早鐘を打つように高鳴りだす。
「どんなに追い掛けても、届かないこともある」
私は今、陸斗くんに抱き締められている。
「届かないことも……確かに、あるんだ」
そう言った彼の目が泣いているようで、何故だか胸が締め付けられた。
遠くで、下校時間を告げるチャイムの音が鳴り響く。
人気(ひとけ)のない校舎には私達と静けさだけが取り残されて、まるで夢でも見ているようだった。