「あんなの、見ただけじゃ何が本当かなんてわかんねぇだろ!!」
「……っ!」
けれど放たれた声が弱い私の心を叩いて、プリントを拾う手が止まってしまった。
たったそれだけで、私の目からは音もなく大粒の涙が零れ落ちる。
「おい……」
突然泣きだした私の鼓膜を、困惑したような陸斗くんの声が静かに揺らす。
慌てて涙を拭いた私は散らばったプリントを必死に掻き集め、再びゆっくりと顔を上げた。
「ううん。わかるよ」
「……は?」
「わかるよ、だって……っ」
声が、詰まる。
だって、朝陽が。
いつも人に対して誠実な朝陽が、さっきあの子と──。
「手……っ、繋いでたっ」
思わずプリントを床の上に置いて、自分の膝に顔を埋めた。
脳裏に焼き付いているのは朝陽が女の子と手を繋ぎながら歩き、笑い合っている姿だ。
朝陽の右手はいつだって私を捕まえていてくれたのに、今日は私以外の女の子の手を掴んでた。
校門に向かっていたということは、これから二人で一緒に帰るということだろう。
グループワークがあるから、私とは一緒に帰れないと言っていたのに、どうしてだろう。