「……っていうか、あんなの」

「ううん、大丈夫。行こう」


私は今にも零れ落ちそうになる涙を必死に堪えて、前を向いた。

……別に、いいじゃない。朝陽が誰と並んで歩いてたって関係ない。

現に私だって今、陸斗くんと一緒にいる。

わかっていた。いつかはきっと、こんな日が来るかもしれないって、わかってた。

最初から朝陽の隣に私は不釣り合いだって、全部、全部、わかっていたことだ。


「おい、待てよ……っ」


足が勝手に、今すぐここから自分を遠ざけようと必死に動いた。

……そうだ、そうだよ。私が私なら、朝陽は朝陽だ。

私達は所詮、ただの幼馴染に過ぎない。

それ以上でもそれ以下でもなくて、これが私の選んだ道だから。


「おい……っ、待てって言ってんだろ!!」

「……っ」


教室に向かって足早に歩く私の腕を、陸斗くんが力一杯、引き寄せた。

その拍子にバサリとプリントの束が床の上へと滑り落ちる。

……いけない。

私は慌ててその場にしゃがみ込むと、プリントを拾った。

これは大事なプリントだ。今度こそ、無事にみんなの手元に届けなきゃ。

こんなことすらできなかったら、私を庇ってくれたみんなにも、合わす顔がない。