「……っ」


だけど、一人じゃない。

私と陸斗くんがいるのは第三棟の一階の、渡り廊下だ。

ここからはグラウンドがよく見える。

誰かと誰かが並んで一緒に帰る姿も……ハッキリと、この目には映っている。


「……おい」


陸斗くんに呼ばれても、その声が私を呼び戻すことはできなかった。

──朝陽が、女の子と歩いてる。

とても楽しそうに、笑い合いながら。

朝陽があんなふうに、女の子と笑って歩く姿は初めて見た。

もちろん別に、可笑しなことではないのに。

それなのに心臓が、まるでナイフで貫かれたようにズキズキと痛んで、息の仕方を忘れてしまった。


「おい、アンタ──大丈夫か?」


陸斗くんの言葉に、頷くことすらできない。

今、朝陽の隣にいる女の子は、この学校でも可愛いと評判の……朝陽と同じ、特進科にいる女の子だった。

さらさらと風になびく黒い髪。スラリと伸びた長い手足と華奢な身体に小さな顔。

整った顔立ちも、朝陽の隣に並ぶと相乗効果でより一層際立って見えた。

遠くから見ても、お似合いな二人だ。

そんな二人を見つめているのは私だけではなくて、数名の女の子たちも何かを囁き合いながら、二人に羨望の眼差しを向けている。