「だけど、いつか……。いつか、きちんと話すことができたら──」
「なんでだよ。別に、無理に話す必要もないだろ」
「……え?」
「だってそんな簡単に、自分の抱えてる苦しみを打ち明けられるわけない。別に、普通だろ。アンタだけじゃない。誰だって人に知られたくないことの一つや二つ……持ってて当然なんだから」
思いもよらない言葉に、私は声を忘れて押し黙った。
陸斗くんは膝の上で開いた自身の手のひらを、ただ静かに見つめている。
彼が今、何を思うのか……私には、わからないけれど。
どうしてか彼の心の奥には、私以外の誰かが常に、いるような気がする。
「あ、あの。陸斗くん──」
「デイ・ドリーマー」
「え?」
「アメリカではアンタが前に言ってた、ADHDの不注意優勢型を、そう呼ぶらしい。〝昼間から夢を見ている人〟って……なんか、語感だけはカッコいいよな」
けれど唐突に口を開いた陸斗くんに、私の言葉は止められてしまった。
デイ・ドリーマー。それは初めて聞く話だ。
確かに陸斗くんの言う通り、言葉の響きだけを聞くと少し、カッコいい。