「だから、よかったな」


……陸斗くんはそう言って笑うけど、全部、陸斗くんのお陰だった。

あのとき、陸斗くんが言いたいことがあるなら言えと背中を押してくれたから。

弱虫で、いつも後ろ向きな私の心を引っ張りあげてくれたから、私は声を上げることができたのだ。


「……私ね、まだ、自分のことをみんなに打ち明けられるほどの勇気はないの」


ぽつりと零すと、再び彼の目がこちらを向いた。

日比野さんが……石上くんが。クラスメイトの数人が今日、勇気を出して私と一緒に戦ってくれたけど。


「仕方がないって言い聞かせても……どうしても、まだ心のどこかで、ADHDだってことを人に知られたくないって思ってる自分がいる」


病院の先生や家族が、いくら『大丈夫』と言ったとしても。

それでも私の心は未だに、自分の抱える問題と、自分が向き合うだけで精一杯なのだ。


「せっかく、みんなは手を差し伸べてくれたのに……。私はまだ、みんなを信じきることができない」


そんな自分が情けなくて卑怯に思えて、どうしても申し訳ないという想いを抱かずにはいられなかった。