……誰かに、自分の声を届けようなんて、とうの昔に諦めていた。
さっきの数学の先生のように、私のできない部分を糾弾し、突き放す人がたくさんいたから。
だけど、そうやって壁を作って、頑なに自分の殻に閉じ篭っていた私にも、こうして手を差し伸べてくれる人はいる。
朝陽や、リュージくんだけじゃない。
自分以外の誰かを理解し、受け入れようとしてくれる人も、たくさんいるのだ。
「あ……ありがとう……」
私は弱虫な心を必死に奮い立たせると、みんなに向けて深々と頭を下げた。
勘違いするなと、笑われてもいい。
バカなやつだと面倒くさがられても、私は今、自分の言葉で伝えたい。
「た、助けてくれて、ありがとう。それと、プリント、失くしてごめんなさい……っ。必ず、見つけて持ってくるから待っててください!」
必死に涙を堪えて、精一杯想いを口にした。
「私、すぐにものを失くしたり……約束を忘れたり、言われたことを守れなかったりして、そのせいでみんなに迷惑かけることもたくさんあるけど……っ」
ADHDのことを、今、ここで打ち明けるには時間が足りない。
私の覚悟と、ここにいる全員にすべてを打ち明ける勇気は……まだ、今の私は持っていない。