「あ、あの……どうして……」
「うん?」
「どうして私を、助けてくれたの?」
思わず日比野さんを見て尋ねると、彼女はキョトンと目を丸くする。
「わ、私のせいで、こうなったのに……どうして……」
そこまで言って、私は言葉に詰まってしまった。
よくよく考えたら、こんなことを聞くのは変かもしれない。
「どうしてって……別に、普通じゃない?」
「え?」
「だって月嶋さん、言ったじゃん。自分は自分なりに精一杯やってる。それでも失敗しちゃったなら、そんなの誰にも責める権利なんてないじゃない」
あっけらかんと笑って答えてくれた日比野さんを前に、今度は私が目を丸くした。
「それにあんなの聞かされて、黙っていられなかっただけだよ。だって、失敗なんて誰にでもあることだし。月嶋さんは素直に認めて謝ったのに、あそこまで責める必要なんて絶対ないでしょ」
鼻の奥が、ツンと痛んだ。
私は溢れそうになる涙を必死に堪えて、真っ直ぐに彼女の言葉を受け止める。
「何より月嶋さんが頑張って言い返してるの見てたら、黙ってなんていられなかった」
「それが一番の理由かなぁ」と続けた彼女が、あっという間に滲んで見えなくなった。