「別に、消すのはいいッスけど。俺が消しても、他の奴らも何人か、撮ってますよ?」


その言葉に、先生がハッとしてから振り返る。

すると何人かのクラスメイトたちが堂々と構えていた携帯電話を降ろして、素知らぬ顔で前を向いた。


「な……っ、だ、誰だ! 誰が撮った!」

「えー。っていうか、先生、撮られて困るようなこと、してたんですか?」


声を上げたのは、商業科の中でも成績上位の女の子だった。

……本当に、何が起きてるの?

思いもよらないことばかりで私はただ、呆然とするしかない。

まるで夢でも見ているような気分になって、必死に一つ一つのやり取りを追いかけたけれど、追いつけない。


「そ、それは、別に困るようなことは……っ」

「じゃあ、別に良いじゃないですか。もう先生のお説教は聞き飽きたんで、さっさと授業、始めてください。"先生のせい"で、授業遅れたら迷惑ですから」


その子の言葉に、今度はクラスメイト数名が、クスクスと笑いだした。

美人で頭の良い彼女は多分、クラスの中でも先生のお気に入りの生徒の一人だ。

それなのに、どうして……。