朝陽は、昔から女の子にモテるのだ。
カッコよくて、運動神経もいい。
それだけならまだしも、県内有数のうちの高校の特進科……つまり、進学クラスに通うくらいには、頭も良かった。
数年後に無くなる予定の商業科に通う私とは、頭の出来がまるで違う。
朝陽は、ちょっと無愛想なところもあるのだけれど、女の子からするとそんなところも乙女心をくすぐる要因の一つなのだと、本人は気付いていない。
「ほら、手、繋いでると目立つし……」
「なんで、急にそんなこと──」
と、そこまで言って、朝陽は不意に口を噤んだ。
すぐに何かを察したように自分の数メートル先にいた女の子たちへと目をやると、再び静かに私へと視線を戻す。
「……あのなぁ、もう何度も言ってるけど」
溜め息混じりに紡がれた言葉の先を、私はもう何度聞いたかわからない。