「り、陸斗くん……?」
「……チッ」
ビー玉のようなブラウンの瞳が真っ直ぐに私のことを睨みつけていた。
いつもは静かな大地のようなその色が、今は苛立ちと怒りで揺れている。
「な……っ、山田、お前なにして……っ」
「テメぇは、それでも教師かよ」
「……っ」
「アンタも。言いたい放題言われて、黙ってんじゃねぇよ。言いたいことがあるなら堂々と言え! 自分自身のことだろ!」
その言葉は真っ直ぐに、私の身体を貫いた。
自分自身のこと。陸斗くんの、言う通りだ。
「山田、お前、何を言って……」
「俺、前に言ったよなぁ。違うと思ったことは主張しろって。だから、言えよ──菜乃花。今のアンタには、その権利があるんだから」
──菜乃花。
そのとき初めて、陸斗くんに名前を呼ばれた。
「アンタの口から言うんだよ。そうじゃなきゃ、アンタはきっと、一生変われない」
きっぱりと、それだけを言った彼は口を噤んだ。
陸斗くんの言葉はいつだって、私の心を、強く叩く。
ぶっきらぼうで遠慮がなくて……それでいて優しい、彼の言葉だ。
私は彼の言葉を貰うたび、もう少しだけ、自分を主張してもいいんじゃないかと思える。
言いたいことは、きちんと言う。
何も引け目を感じずに──堂々と、顔を上げたいと思うんだ。