「電車が来るまで、少し時間あるな」
朝陽の言葉にゆっくりと顔を上げれば、目の前には、キラキラと輝く美しい海があった。
駅のホームに着くとそこには私達と同じ制服を着た生徒が数名立っていて、朝陽を見つけた女の子たちがソワソワと何かを囁きだした。
けれどすぐに、彼女たちの視線が繋がったままの私と朝陽の手に移る。
そうして彼女たちは忌々しそうに私を睨むと、再びコソコソと何かを囁いた。
「……ねぇ、朝陽」
「ん?」
「手、繋がなくてもいいよ?」
別に、名前も知らない彼女たちに気を使うわけではないけれど。
なんとなく罪悪感に駆られて心にもないことを口にすると、朝陽が一瞬、訝しげに眉根を寄せた。