陸斗くんは目を見開いて、固まっている。

確かに、陸斗くんの言うとおり……朝陽は多分、陸斗くんのことを良くは思っていないだろう。

それは朝陽のあの態度が物語っている。

理由はわからない。だけど朝陽は今日まで一度も、私の前で陸斗くんを悪く言ったりしなかった。

最初の席替えの話だって……陸斗くんは私を庇ってくれたんじゃないか、なんてことまで言っていたくらいだ。

そのあとも、陸斗くんのことに関して何か陰口を叩くようなことは一切していない。


「朝陽は、いつもそうなの。何か言いたいことがあれば本人に直接言う。そのせいで昔は、上級生や先生に生意気だとか言われた時期もあったけど……」


それでも朝陽は周りにどう思われても関係ない、自分は自分だからと毅然としていた。

──自分が正しいと思ったことを貫く。

それは言葉にすると簡単だけれど、実際に行動に移すとなると、とても難しいことだと思う。


「朝陽はただ真っ直ぐで、誠実なだけ。他人に厳しい分、自分にはもっと厳しい。朝陽の周りにいる人たちは、そういう朝陽の良さに少しずつ気付いて、いつの間にか彼に惹かれていくの」


朝陽は周りを見ていないようで、本当はよく見てる。

無関心に見せて、困っている人がいたら必ず手を差し伸べる、優しい人だ。