「アイツ、なんで俺に突っかかってくるわけ?」
「それは……それも含めて、今、悩んでるとこ」
気怠げに息を吐いた陸斗くんの声には、ほんの少しの苛立ちが滲んでいた。
だけど本当に、私が聞きたいくらいなのだ。
どうして朝陽と陸斗くんは会うたびに喧嘩腰になってしまうのか……。
単純に、二人の相性が悪いだけ?
だとしたら、仲良くなるなんて絶対に無理だろう。
「……アイツ、どうせアンタに、俺のこと色々言ってんだろ?」
「え?」
「まぁ、特進科の優等生様だし。俺みたいな商業科のやつのことなんて、最初から眼中にもないだろうけどな」
今度こそ、呆れたように息を吐いた陸斗くんは、自嘲するように小さく笑った。
「結局、そんなもんだ。別に俺は、アイツにどう思われようと関係ないし、どうでもいいけど──」
「朝陽は、そんなこと言わないよ!」
私は思わず、声を張り上げた。
「……は?」
「朝陽は、理由もなく人を貶したり、見下したりするような人じゃない。だから陸斗くんのことも、一度も悪く言ったことないよ」
顔を上げた私はハッキリと言いきると、真っ直ぐに陸斗くんのことを見つめた。