「りっくん、またサボりかよー。先生に怒られるぞ?」

「あー、今日はこれから行くからいいんだよ」


ゆっくりと近付いてきた彼は、私とリュージくんの前まで来ると足を止めた。

そうして手に持っていた携帯電話を制服のズボンのポケットの中へと滑らせ、気怠げに首を傾げる。


「え、逆になんで急に浜辺清掃行く気になったわけ?」


リュージくんの疑問は最もだ。私も全く、同じことを考えた。


「……なんか、この近くの浜でウミガメが卵を産んだらしくて」

「ウ、ウミガメが卵!?」

「そう。浜辺清掃する浜じゃなくて、もっと西側の浜らしいけど。なんかちょっと、すごいだろ?」


思いもよらない言葉に、私とリュージくんは再びぽかんと口を開けて固まった。

この近くの浜でウミガメが卵を産んだ? まさか、本当に?

勝手なイメージだけど、もっと南国とか海がきれいなところとか、そういう場所じゃないとウミガメは卵なんて産まないと思ってた。

何より、ウミガメが卵を産んだからって、どうして陸斗くんは浜辺清掃に行こうと思ったのだろう。


「しかも、去年の話だけどな。でも、ゴミ拾いしといたら、今度はこっちの浜でも産卵するかもしれないだろ」


私達の考えは、きっと顔に出ていたのだろう。

丁寧に説明してくれた彼は心なしかウキウキした様子で、ポケットに入れたばかりの携帯電話を取り出した。