「陸斗くん、私が課題をやるのを手伝ってくれたり……。あ! 教えるのが先生みたいに上手でね! だから、それで……あとは、ええと……」


必死に陸斗くんの良いところを朝陽に伝えようとしたけれど、続く言葉が見つからない。

陸斗くんのことを言葉で説明するのは難しいんだ。

実際に会って、彼という人に触れて初めて、良さを知ることのできる人。

上辺だけの彼は辛辣で、ただ、人を寄せ付けない人だから……それを言葉にして表現するのは、私には少し、難しい。


「……最初は、隣の席になって困ってたのにな」

「え……」

「くじ引きでソイツと隣になったとき、俺が笑ったら……菜乃花、笑い事じゃないって、怒っただろ?」


言い終えて、朝陽は何故か小さく笑った。

その笑顔がやっぱりどこか寂しそうに見えて……。

何故だか心が不穏に揺れて、胸の奥がざわめいた。


「朝陽、私──」

「良かったな」

「え?」

「菜乃花のこと、ちゃんと見てくれるやつがいて。クラスに一人でも、そういうやつがいるなら……菜乃花も、心強いだろ」


数秒の間を空けてから、戸惑いがちに頷いた。

いつもと違って昇降口ではなく、校門の前で手が離される。