本当に、初めてだったんだ。

朝陽以外で初めて、あんなふうに言ってくれる人に出会えて……私はとても、嬉しかった。


「ほら、朝陽はさ。いつも、"周りは周り、菜乃花は菜乃花だ"って、言ってくれるでしょ? だけど、それとは少し違った目線で見てくれる人がいて……なんだかすごく、驚いたの」


学校まで、あと数十メートル。

坂道を上りきったその場所で小さく笑えば、不意に朝陽が足を止めた。

手が繋がっているせいで必然的に引っ張られた私も慌てて、その場に身体を留める。


「朝陽?」


何故か眉根を寄せて、難しい表情をしている朝陽は怒っているようにも、哀しんでいるようにも見えた。

どうして朝陽がそんな顔をするのか……わからないから、不安になる。


「……誰?」

「え?」

「その、言ったやつ」


無機質な声を出した朝陽は、繋いだ手を強く握り締めながら、私を真っ直ぐに見据えた。