「菜乃花は、菜乃花らしくやればいいよ。他の誰も知らなくても、俺は菜乃花が頑張ってること知ってるから」
「ありがとう……」
優しい朝陽は昔から、そう言って私を甘やかす。
それでも本当に、朝陽は私のそばで、私の苦しみも葛藤も、人から『足りない』と言われる努力も全部……見ていてくれた。
「あ……そうだ」
「うん?」
「あのね。今の朝陽みたいに、言ってくれる人がいたんだよ」
「俺みたいに言ってくれる人?」
唐突な私の言葉に、朝陽はキョトンとしてから首を傾げた。
思い出すのは先日、第三音楽室で陸斗くんに言われた言葉だ。
「正確には、怒ってたって感じだけど……。私は私なりの努力をしてるんだから堂々としてろ、みたいなことを言ってくれたの」
ああいうふうに、私のことを悪く言う人に対して怒ってくれる人は、今まで私の周りにはいなかった。
ついでに、諦めている私の姿勢を怒ってくれる人もいなかった。