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「なんか、急に暑くなってきたな」


支度を終えて家を出れば、今日も門の前で朝陽が私を待っていた。

名前の通り、朝の陽の光のように温かな彼は、私を見るなりとても優しく目を細める。

季節は夏を迎える頃。夏服に変わっても朝陽のカッコ良さは健在で、なんだかとても眩しく見えた。


「暑いけど、夏は賑やかだから楽しいよ」


隣に並べば当たり前のように手が繋がって、私達はいつも通り、通学路を歩き出した。

家から駅まで歩いて電車に乗って、最寄り駅で降りると学校までの道のりを並んで歩く。

最近、帰りは一緒に帰れないから、朝の、この僅かな時間が私にとっては大切だ。

朝陽はどう思っているのかわからないけれど……。それでも以前言っていた、"充電"の言葉の通り。

昇降口で別れるギリギリまで、私と手を繋いでいてくれる。


「そういえば、もうすぐテストだろ。菜乃花、今回は大丈夫そう?」

「うーん、大丈夫。良い点が取れるかどうかはわからないけど、今回もやれるだけやってみるから」


精一杯笑って答えると、朝陽の手が私の髪を優しく撫でた。