……でも、それもお母さんが悪いわけじゃない。
受け入れられなくても、仕方がないんだ。
私が今、パンを焦がしてしまったように、お母さんも悪気があって私を怒るわけではないから。
そう。誰が悪いわけでもない。
ただ、私が偶然、障がいを抱えて産まれてきてしまっただけなのだ。
たった、それだけのこと。
イジワルな神様の気まぐれで、こうなっただけだから。
「……菜乃花、ごめんね。パン、イチゴジャムにする? それともブルーベリー?」
ほんの少し赤くなった目を細め、キッチンの向こうからお母さんが私を呼んだ。
着慣れた制服のブラウスに袖を通してお母さんへと向き直れば、私の大好きなブルーベリージャムを手に持つ母が立っていた。
「ブルーベリーにする! お母さん、いつもありがとう」
真っ直ぐに。凛と声を響かせればお母さんが小さく笑った。
リビングに、漂うパンの香り。
私は笑顔でダイニングテーブルに腰を下ろして、「いただきます」と、手のひらを静かに合わせた。