「さっさと終わらせて、今度こそ先生のこと、見返してやれよ」
そう言って、廻していたペンを止めた陸斗くんを前に、再び声を零して笑った。
「でも現代文の先生は、私のこと、すごくよく見てくれる良い先生だよ?」
「は……?」
「数学の先生とは、全然違うの。いつも、よく頑張りましたねって褒めてくれるもん」
私の言葉に、陸斗くんは「……なんだよ」と零してから眉根を寄せた。
その後にはきっと、「心配して損した」なんて言葉が続くんだろう。
ほんのりと、赤く染まった頬と耳。
それがやっぱり可笑しくて、何より嬉しかった私は彼に向って、「ありがとう」と呟いた。