「あ、あのっ。陸斗く──!!」
ダンッ!と、私の言葉を遮って、陸斗くんが隣の席から取った椅子を正面に置いた。
そのまま有無を言わさず腰を下ろすと、見せ付けるように息を吐き出して忌々しそうに私を睨む。
一体、何が起きたのか──と、うろたえるより先に、彼は足元に置いてあった鞄から唐突に一冊のノートを取り出した。
そうして私をジロリと睨むと、ノートを狭い机の上に並べていく。
「あ、あの……」
「どうせ、俺が教えるとか言うと、自分の力でやりたいからとか言い出すんだろ」
「え?」
「……っ、だから! "仕方がない"から、俺もアンタとここで課題をやる。気が散るんだったら、あっちの隅に移る。でも、何かわかんないとこがあればすぐに俺に聞け」
「……え」
「言っとくけど。教室でまた、今日みたいにイライラさせられるのはごめんだ、ってだけだから」
それだけ言うと陸斗くんは視線を落として、今度は自分のペンを指先で、クルクルと廻した。
今更だけど陸斗くんは、私が教室で先生に責められたことを、気にしてくれていたのだ。