「アンタの事情、知ってるはずなのに……」
「仕方ないよ」
「……は?」
一瞬、手元へと視線を落としてからゆっくりと顔を上げれば、訝しげに眉根を寄せる陸斗くんと目があった。
「だって、きっとわからないから。"忘れ物しないように気をつけよう"って思って気をつけられる人には、どんなに気をつけても無理な私のことは、わからなくて当然だよ」
昔から、周りにはよく『努力が足りない』と注意された。
落ち着きがないのも、忘れ物が治らないのも、注意力が散漫で授業中に上の空になってしまうのも……。
全部、私の努力が足りないからだと言われ続けた。
「自分なりに精いっぱい努力しても、どうにもできないんだって。サボってるわけじゃなくて、本当にどうやってもできないんだ……って。わかってもらうのは、すごく難しい」
約束を忘れてしまって守れなかったり、メモをしたのに結局なくしてしまったり。
片付けができなかったり、授業中に脇見をしてしまったり……。
指摘や注意をされて、私は私なりに説明を試みるのだけれど、何を言っても『言い訳だ』と鼻で笑われるか呆れられるか、どちらかだった。